掲載日: 2022年10月7日更新
滝根町には国指定天然記念物の入水(いりみず)鐘乳洞と市指定天然記念物あぶくま洞の2つの鍾乳洞の存在が現在のところわかっています。
そのうち、入水鐘乳洞は滝根町菅谷と常葉町早稲川にまたがっており、1927(昭和2)年に神俣在住の薬剤師蒲生明を中心として鈴木菊意、佐藤留男、富岡一男の4人により第1洞が発見、探索され、1929(昭和4)年に第2洞を探索、その後、文部省の天然記念物調査官による調査の後、1934(昭和9)年に国の天然記念物に指定されました。
また、あぶくま洞は、1969(昭和44)年に柳沼伝次郎によって洞口が発見され、柳沼伝次郎は先崎三郎とともに最初の探検を行っています。当初は「釜山鍾乳洞」という仮の名がつけられましたが、1973(昭和48)年に名称が公募され、「あぶくま洞」となりました。
鍾乳洞は、石灰岩が地下水などに侵食されてできた洞窟で、阿武隈山地には未変成の石灰岩礫を含む層が多く分布しているため、多数の鍾乳洞がありますが、規模の大きい鍾乳洞は相双地方と滝根町から常葉町にかけての2カ所にしかありません。
鍾乳洞が作られる石灰岩地帯の地形をカルスト地形と呼び、滝根町の駒ヶ鼻(こまがはな)、中平(なかひら)、仙台平(せんだいひら)ではよく発達したカルスト地形を見ることができます。カルスト地帯に見られる地表の窪みをドリーネと呼び、この部分に水がたまり、石灰岩を溶かして地中に入り込み、鍾乳洞を作っていきます。2つの鍾乳洞は、東側の早稲川から流れ込む水によって作られたものと思われ、それまで流れていた川の水が急になくなる「ネコジャクシ」(実際には鍾乳洞内に流れ込みます)と呼ばれる箇所があります。
およそ8,000万年の歳月をかけて作られたといわれる鍾乳洞は、天井から垂れ下がる鍾乳石とその水滴から床面に作られたたけのこ状の石筍(せきじゅん)や鍾乳洞内を流れる川が落下する大小の滝、洞内の空間など千変万化の神秘的な造形美がみごとです。
もともと阿武隈山地にある田村市周辺は北上山地とともに隆起して陸地となって以来、一度も沈降して海になったことのない日本でも最も古い陸地です。会津地方の北部ではおよそ1,600万年前の貝の化石が出土していますが、田村市からこれまで海に関係する貝の化石などは出土していません。
そのほか古来より伝説があって知られている鬼穴/達谷窟(おにあな/たやのくつ)も鍾乳洞の一つで、その奥は入水鍾乳洞へ続いています。
またあぶくま洞では現在でも新たな洞が発見されており、これまで全長600mといわれていた長さがより長くなる可能性があります。
あぶくま洞ラベンダー園/あぶくま洞切羽/入水鍾乳洞
所在 入水鍾乳洞(田村市滝根町菅谷字大六89-3)、あぶくま洞(田村市滝根町菅谷字東釜山1)
見学 有料、年中無休 詳しくは施設ホームページ(https://abukumado.com/)をご覧ください。
文化財 入水鍾乳洞(国指定)、あぶくま洞(市指定)
おすすめの時期・見頃 6月から7月:あぶくま洞ラベンダー園・あじさい