掲載日: 2026年3月26日更新
令和6年(2024年)5月17日に、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、民法等の一部改正法が成立しました。
この改正法は、こどもを養育する父母の責務を明確化するとともに、親権(単独親権、共同親権)、養育費、親子交流、養子縁組、財産分与等に関する民法等の規定を見直すものです。
施行日は、令和8年(2026年)4月1日です。
こどもの未来のための親権・養育費・親子交流などに関する民法改正の主なポイントは以下のとおりです。
こどもの未来を担う親としての責任として、親権や婚姻関係があるかどうかに関わらず、こどもを育てる責任と義務についてのルールが明確にされています。
こどもが心も体も元気でいられるように育てる責任があります。こどもの利益のため、意見をよく聞き、人格を尊重しなければなりません。
父母には、親権や婚姻関係の有無に関係なく、こどもを養う責任があります。養う度合いは、こどもが親と同じくらいの生活を送れる水準でなければなりません。
こどものために、お互いを尊重して協力し合うことが大切です。
(注意)下記のようなことは、このルールに違反する場合があります。
・父母の一方から他方への暴行、脅迫、暴言等の相手の心身に悪影響を及ぼす言動や誹謗中傷、濫訴等
・父母の一方が、他方による日常的なこどもの監護に、不当に干渉すること
・父母の一方が、特段の理由なく他方に無断でこどもを転居させること
・父母間で親子交流の取り決めがされたにも関わらず、その一方が特段の理由なく、その実施を拒むこと
※父母の一方が人格尊重・協力義務等に違反した場合には、親権者の指定又は変更の審判、親権喪失や親権停止の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があります。
しかし、DVや虐待から避難するために必要な場合などは、上記の義務に違反するものではありません。
親権者はこどもの世話やお金、物の管理などについて、こどもの利益のために責任を果たさなければなりません。
一人だけが親権を持つ単独親権のほかに、離婚後に父母2人ともが親権を持つ共同親権の選択ができるようになります。
父母双方が親権者である場合(共同親権)の親権の行使方法のルールが明確化されています。
1 親権は、父母が共同して行います。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他方が行います。
2 次のような場合は、親権の単独行使ができます。
(1)監護教育に関する日常の行為をするとき
| 日常の行為にあたる例(単独行使可) | 日常の行為にあたらない例(共同行使) |
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・食事や服装の決定 ・短期間の観光目的での旅行 ・心身に重大な影響を与えない医療行為の決定 ・通常のワクチンの接種 ・習い事 ・高校生の放課後のアルバイトの許可 |
・こどもの転居 ・進路に影響する進学先の決定 ・心身に重大な影響を与える医療行為の決定 ・財産の管理(預金口座の開設など) |
(2)こどもの利益のため急迫の事情があるとき
父母の協議や家庭裁判所の手続きを経ていては親権の行使が間に合わず、こどもの利益を害するおそれがある場合をいいます。急迫の事業があるときは、日常の行為にあたらないものについても、父母の一方が単独で親権を行うことができます。
(例)DVや虐待からの避難(こどもの転居を含みます)をする必要がある場合(被害直後に限りません)
(例)こどもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
(例)入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っているような場合
3 特定の事項について、家庭裁判所の手続きで親権行使者を定めることができます。
(注)改正前は、1のみが規定されており、2と3については規定がありませんでした。
父母が離婚をするときは、こどもの監護の分担についての定めをすることができます。定めをするにあたっては、こどもの利益を最も優先して考慮しなければなりません。
離婚後の父母双方を親権者とした場合であっても、その一方を「監護者」として定めることで、こどもの監護をその一方に委ねることができます。この場合、監護者は日常の行為に限らず、こどもの監護教育や居所・職業の決定を単独ですることができます。
監護者でない親権者は、監護者がこどもの監護等をすることを妨害してはなりませんが、監護者による監護等を妨害しない範囲であれば、親子交流の機会などに、こどもの監護をすることができます。
こどもの生活を守るために、養育費を確実にしっかりと受け取れるように、新たなルールの創設やルールの見直しが行われました。
これまでは、同居親と別居親の間で養育費の支払を取り決めていたとしても、別居親が養育費の支払を怠ったときに別居親の財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書等の「債務名義」が必要でした。
しかし、今回の改正により、養育費債権に「先取特権」と呼ばれる優先権が付与されるため、債務名義がなくても、養育費の取り決めの際に父母間で作成した文書に基づいて、差し押さえの手続きを申し立てできるようになります。
※改正法施行前に養育費の取り決めがされていた場合には、改正法施行後に生ずる養育費に限って、この改正が適用されます。
※養育費債権のうち、先取特権が付与される額は、月額8万円に子の数を乗じて得た額となります。
これまでは、父母の協議や家庭裁判所の手続きにより養育費の額を取り決めなければ、養育費の請求ができませんでした。
しかし、今回の改正により、離婚のときに養育費の取り決めをしていなくとも、離婚のときから引き続きこどもの監護を主として行う父母は、他方に対して、一定額の「法定養育費」を請求できるようになります。
法定養育費が支払われない場合は、差し押さえの手続きを申し立てることができるようになります。
※法定養育費の額は、月額2万円に子の数を乗じて得た額となります。
ただし、法定養育費は、あくまでも養育費の取り決めをするまでの暫定的・補充的なものですので、こどもの健やかな成長を支えるためには、父母の協議や家庭裁判所の手続きにより、適正な額の養育費の取り決めをすることが大切です。
家庭裁判所は、養育費に関する裁判手続きをスムーズに進めるために、収入情報の開示を命じることができることとしています。また、養育費を請求するための民事執行の手続においては、地方裁判所に対する1回の申立てで財産開示手続、情報提供命令、債権差押命令という一連の手続きを申請することができるようになります。
こどものことを最優先に、親子交流や父母以外の親族との交流に関するルールが見直されました。
家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に行うことができます。家庭裁判所は、こどものためを最優先に考え、実施が適切かどうかや調査が必要かなどを検討し実施を促すことができます。
父母が婚姻中にこどもと別居している場合の親子交流は、こどものことを最優先に考えることを前提に、父母の協議で決め、決まらない時は家庭裁判所の審判等で決めることがルールとなります。
祖父母など、こどもとの間に親子関係のような親しい関係があり、こどものために必要があるといった場合、家庭裁判所は、こどもが父母以外の親族との交流を行えるようにできます。
・財産分与の請求期間が2年から5年に伸長されています。
・財産分与において考慮すべき要素が明確化されています。
・養子縁組がされた後に、だれが親権者になるかが明確化されています。
・養子縁組についての父母の意見対立を調整する裁判手続が新設されています。
詳しくは、下記をご覧ください。
民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について
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